小学校英語教育の基礎知識

1ページで丸わかり!親が知りたい「小学校英語教育の基礎知識」

テレビCMでもよく聞くようになった、「英語教育改革」という言葉。みなさん、その内容をご存じですか?

なんだかすごいことが起きるような表現が使われているので、

「うちの子、大丈夫かしら??」

と心配になる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

でも、実は、そう大変なことではありません。

今回は、保護者目線から「英語教育改革」をひも解き、その内容と、私たち保護者に求められること・保護者が気をつけるべきことを探っていきたいと思います!

英語教育改革って何?

小学校英語教育とは
簡単に表現すると、

「今までの学校教育では『使える英語』が身につかないので、小学校・中学校・高校とトータルに英語教育を見直し、学校教育で英語が使える人材を育てていけるよう改革します。」

ということです。

つまり、学校教育が変わりますよ。学校に通ってきちんと英語を勉強していれば、英語を使える人になれるように教育していきますよ、という教育界の決意表明ともとらえることができます。小中高の英語教育に加え、大学受験の英語もトータルで変わること押さえたいポイントです。

 

【理由】

さて、なぜ今になって英語教育改革をするのでしょうか?

理由は大きく分けて2つあります。

世界が急速にグローバル化しており、国際共通語である英語の習得は必須

この英語教育改革で見据えているのは、2050年の日本。子供たちが社会で活躍する頃には、日本が島国であるとはいえ、多文化・多言語・多民族の人たちが協調・競争する世界で生きていくことになります。

日本の小さな小売店に、海外企業から注文が入るこの時代に、日本にいるからといって英語を使ってコミュニケーションが図れないというのは経済的にも損失であるし、子供たちの未来の可能性を広げるためには「英語習得」は必須、と言えます。

 

今の学校教育では英語を使える人材が育っていない、という現状

文部科学省では、中学校卒業段階で、中学生の50%が「英検3級程度以上」を取得できる英語レベルに到達していることを目標としてかかげています。しかしながら、平成28年度の状況調査によると、残念ながら未だ達成されていません。

また、高校卒業段階では、高校生の50%が「英検準2級程度以上」を達成することが目標となっていますが、これも未達成。

文部科学省による英語達成度の図※文部科学省ホームページより抜粋(www.mext.go.jp/

英語を積極的に使ってコミュニケーションを図る人材を育成するには、大幅な変更が必要。今までの「読む・書く」中心の英語教育から、「聞く・話す・読む・書く」の4技能を伸ばすために、小中高、そして大学受験までトータルに改革する必要性が出てきたのです。

 

【目標】

小学校から高校までを通した目標設定がされています。

ずばり、高校卒業時に「英検2級~準1級」を取得できる程度の英語力を習得すること、です。

英語教育改革前は、「英検準2級程度以上」の高校生を50%、と目標をかかげていたことを考えると、本気度が伺えます。

ただし、これはあくまでも「程度」の話です。実際に英語検定を受験するかは個人に任されると思いますので、これくらいの英語力、という目安として考えてください。英検も進化を遂げており、親世代の英検とは多少異なりますので、確認しておきましょう。

英語教育改革で日本の英語が変わる

(こんな英語力が学校で身につくのであれば、子供たちがうらやましい!)

【英検2級】

  • 高校卒業程度のレベル(社会生活に必要な英語を理解し、使用することができるレベル)
  • 1次試験は「筆記(読解と英作文)・リスニング」
  • 2次試験は「面接形式のスピーキングテスト」―60語程度のパッセージの音読と質問への回答、3コマイラストの展開説明と質問への回答、日常生活に関する意見陳述
  • 2次試験の主な題材:環境にやさしい素材、オンライン会議、屋上緑化、ペット産業、新しいエネルギー、サプリメント、など

【英検準1級】

  • 大学中級程度のレベル(最終目標である1級の手前まで着実に実力をつけているレベルで、社会生活に必要な英語を十分理解し、使用できるレベル)
  • 1次試験は「筆記(読解と英作文)・リスニング」
  • 2次試験は「面接形式のスピーキングテスト」―試験官との自由会話(日常会話)、4コマイラストの展開説明と質問への回答、イラストに関連性のある社会性のある事柄に関する質問への回答
  • 2次試験の主な題材:在宅勤務、レストランでの喫煙、チャイルドシート、住民運動、キャッチセールス、護身術、など

※公益財団法人 日本英語検定協会ホームページを参考www.eiken.or.jp/

ちなみに、CEFRではA2~B1レベル以上1が目標とされています。

CEFRとは、欧州評議会が作成した「外国語の学習・教授・評価のための言語共通の参照枠組み」のことです。能力は「~ができる」という CAN-DOによりレベル定義されます。 A2は「身近な範囲での日常会話ができる」レベル。B1は「旅行時、起こりうる大半の情報に対応できる」レベルです。

 

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具体的に「何」が変わる?

小学校・中学校・高校・大学受験のあり方が、それぞれで変わります。小学校に関しては、これから具体的に説明をしますが、ここは大枠をざっくり押さえておきましょう。

  • 小学校
    • 小学校3・4年生で「外国語活動」がスタート
    • 小学校5・6年生で「教科」としての「英語」を導入
  • 中学校
    • 授業は基本「英語」で実施
    • 音に触れてから「読む・書く」に移行する授業を展開
  • 高校
    • 授業は基本「英語」で実施(※現行)
    • 英語で「発表・議論」する活動を導入
  • 大学受験
    • センター試験の廃止
    • 大学入学共通テストで「4技能評価・民間試験や検定試験を活用」

 

「いつ」から変わる?

小学校に関して言えば、全面実施は2020年から。

ただし、移行期間として、2018年度から英語教育の導入が始まります。3・4年生は、年間15時間の実施。5・6年生では50時間の実施が求められています。実際の対応は、地域や学校に委ねられているため、2020年までの間は英語教育に差が出ます。

※中学校での全面実施は2021年から。
※高校では2022年から。
※大学入試は2020年~23年は「大学共通テスト」と「民間資格・検定試験」の併用。2024年からは「民間資格・検定試験」の一本化が決定。

 

小学校の英語教育はどうなる?

英語教育改革で目指す英語レベルを知ろう

小学校での英語教育を、2学年ごとに見ていきましょう。

◆小学校1年~2年

「あれ?3・4年生から外国語活動がはじまるって書いてあったよね」と疑問に思った方もいらっしゃるかと思います。

ここが落とし穴。

2020年から実施の新学習指導要領では、3・4年生から「外国語活動」をスタートすることになっていますが、それは各自治体やその学校に委ねられています。

公市立の小学校であっても、小学校1年生から英語の授業を週1回取り入れている学校があります。

小学1年・2年生では、基本的な表現習得の他、歌やゲームなどの活動を通して「英語を楽しむ」ことが主眼になります。

 

◆小学校3年~4年

全小学校での実施が決められているのが、小学校3・4年生からの「外国語活動」です。

そもそも、「外国語活動」とは何なのでしょうか?

「外国語活動」とは?

「英語の音やリズムに慣れ親しむ活動」「(外国語の)言葉の面白さや豊かさを味わい、それを使ったコミュニケーションに対する関心・意欲・態度を育てる活動」のことです。つまり、簡単に言うと、英語に親しむ活動ということですね。

ここでの目標は、「身の回りのことについて、質問したり、答えたりすることができる」ことです。

例えば、
小学生A: “What sport do you like?”
小学生B: “I like soccer.”
というような、質問形式の会話です。

外国語活動では、成績はつきません。あくまで、英語を楽しむことがメインになります。

また、授業時間は、年間35時間(週1コマ程度)。2018・2019年は、移行期間として年間15時間の実施となります。

 

◆小学校5年~6年

5・6年生からは「教科としての英語」になります。

教科になると聞くとドキッとしますが、5・6年生で行われていた「外国語活動」が「教科」に変わったのは、中学校への移行を意識してのこと。

文部科学省で行ったアンケート調査(※中学生対象)によると、多くの中学生が「小学校の「外国語活動」は物足りない」「小学校での『外国語活動』と中学校の教科英語とのつながりが感じられない」と考えていることが分かりました。その結果、外国語活動は3・4年次に前倒しし、中学校への準備段階として5・6年次を位置づけるようになったのです。

「教科の英語」とは?

まず、教科書を使用します。

楽しことがメインだった「外国語活動」とは異なり、具体的に英語のスキルを身につけていく段階です。ここでの目標は、英語によるコミュニケーションの基礎を養うこと。より多くの会話表現を身につけ、より会話が続くように、自分の意見が言えるように学習していきます。

例えば、
小学生A: “What sport do you like?”
小学生B: “I like soccer.”
B: “Can you play soccer?”
A: “Yes I can.”

C: “What food do you like?”
D: “I like ×××.”
C: “Why?”
D: “(Because) It’s super juicy.”

先ほどの「外国語活動」と違いますね。少しずつ、会話が伸びていきます。また、過去形・三単現のS(例:She gives ××× to me.などの、動詞につくs)なども、会話の一部として学習していきます。

 

そして、成績がつきます。

現在の方針では、「主体的に取り組む態度」「思考・判断・表現」「知識・技能」を「パフォーマンス評価」と「活動観察」により評価する方向です。よって、ペーパーテストに加えて、実際に会話をしてみるなどのスピーキング形式のテストも行われることが予想されています。

成績、と聞くとドキドキしますが、あまり心配する必要はありません。学校で学習した表現は、授業中に何度も何度も繰り返して、表現を定着させる指導になっています。学校で英語を楽しんで学習できていれば、まず問題はないでしょう。

 

保護者が気をつけたいこと

保護者が知りたい小学校英語

ここまで、英語教育改革をみてきましたが、いかがでしたでしょうか?

中には、高校卒業段階で「英検2級・準1級程度」の英語力、という目標設定に驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。親世代からすると、英語学習の内容が格段にむずかしくなるよに感じ、心配な気持ちになります。

ですが、子供たちはこの教育改革の中で英語を学び、育っていきますので、大丈夫。親が思うより、子供は新しいことにすぐ順応していきます。

特に、小学生の英語教育で大切なのは、子供が「英語=楽しい」と思える環境を整えてあげることです。

小学校で英語を楽しいと思った生徒は、中学校になっても英語学習に積極的である、という調査結果も出ており、小学校での「英語=楽しい」という認識が非常に大事であることがわかります。

 

保護者としては、子供が英語で苦労しないように、習い事や自宅学習に力をいれてあげたくなるものです。

しかし、一番大切なのは、子供が英語を楽しみ、英語によって世界が広がる感覚を掴めるようになること。そのことを忘れずに、子供たちの毎日を大切にしていけば、文部科学省が掲げる目標をクリアできる日も近いのではないでしょうか。

 



成長因子