
子供に親が英語を教えようとするとき、悩ましいのが「どうやって文法を教えるか」ということではないでしょうか。
「小学生のうちは英語に触れ、楽しむことが大切。文法を学習するのは中学校からで十分」といわれます。
とはいえ、英検を受けようとしたら文法は欠かせませんし、学校教育=英文法・読解が中心だった親世代のわたしたちが、英文法用語を使わないで子供に英語を教えるのは、正直むずかしいものです。
そこで、「小学生が楽しんで英文法を覚えられる」教え方・家庭学習法をいろいろと考え、ご紹介することにしました!
今回使用するのは、『Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?』です。
『くまさんくまさんなにみてるの?』
著者は、ビル・マーチン氏。
イラストは、『はらぺこあおむし』でも有名なエリック・カール氏です。
日本語訳の題名は、『くまさんくまさんなにみてるの?』。
乳幼児期に、この本を読み聞かせした方も多いと思います。この、子供が慣れ親しみやすい絵本の「英語版」を使って、英文法を学習します。
英文法を小学生に教える際の「2大原則」
まず最初に、小学生のこどもに英文法を教える際の注意点をおさえておきましょう。
特に、小学生に英文法を教える際に気をつけたいのは、以下の2項目です。わたしはこれを、「2大原則」と呼んでいます。
- 英文法用語は使わない
- 飽きたらやめる勇気をもつ
①英文法用語は使わない
小学校の英語教育では、基本「英文法用語」は使いません。それは、文法用語が小学生の理解をさまたげてしまうからです。
英文法用語とは、例えば「三単現のS」・「過去形/過去分詞形/現在分詞形」というような、英語の文法を説明するうえで必要な言葉のことを指します。中学生・高校生で英語を勉強するときに使いましたよね!
中学生や高校生には便利な文法用語ですが、小学生には適さないと言われています。それは、小学生の脳が「抽象的な思考」を身につける段階にあるからです。
人によって異なりますが、9歳~10歳頃になると「子供の思考傾向」が変わります。
それまでは「単純にものを捉え、吸収していく傾向」にあったのに対し、9歳くらいになると「抽象的なものの考え方」ができるようなります。
幼児期のこどもは、車の名前・好きなキャラクターの名前など、どんどん覚えてしまいますよね。それは、まだ脳がまだ十分に発達をしておらず、思考回路が単純なためなのです。
小学校のカリキュラムも、この子供の発達過程に合わせて作られているので、4年生から抽象的な学習が多くなり、「勉強ができる子・できない子」の差がでてくると言われています。
抽象的なものの考え方ができるようになってきたからといって、まだまだ「単純思考」が優位な小学生。文法用語は小学生の脳を混乱させてしまうので、極力使わないで教えるのがおススメです。
②飽きたらやめる勇気をもつ
この記事を読んでくださっている皆さんは、「子供の英語力を伸ばしてあげたい」と、お子さんのことを真剣に考えている方が多いと思います。
「これは使える!」と思う教育法に出会うと、それを使って子供がどんどん語学力を増していくイメージを描きたくなるものです。
ですが、そういう時こそ一呼吸。
目の前にいるお子さんは、この英語学習を楽しんでいるでしょうか?
小学生低学年のうちは、「英語が楽しい」と思えることが一番。高学年になったら、それに加えて「もっと知りたい」という知的好奇心をくすぐる学習であることが大切です。
でも、もし万が一、「これは使える!」と思った学習をしていて、子供がつまらなそうな顔をしたら…?
もし、お子さんが飽きてしまったら、思い切って中断してしまいましょう。また時期をみて、挑戦してみればOKです。意外と「子供の方から続きをやろう!」と催促してくる場合もありますよ。
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【絵本のお話】英語訳・日本語訳
では、内容を確認していきましょう!
このお話は、youtubeで「英語の歌」「読み聞かせ」などの動画が多くあがっています。著作権の関係上、こちらでご紹介はできませんが、ぜひ検索してみてください。
Brown Bear,
Brown Bear,
What do you see?
I see a red bird looking at me.
茶色いクマさん、茶色いクマさん、何が見えるの? ぼくを見る赤いトリを見てるの。
Red Bird,
Red Bird,
What do you see?
I see a yellow duck looking at me.
赤いトリさん、赤いトリさん、何が見えるの? 私を見る黄色いアヒルを見てるの。
Yellow Duck,
Yellow Duck,
What do you see?
I see a blue horse looking at me.
黄色いアヒルさん、黄色いアヒルさん、何が見えるの? 私を見る青いウマを見てるの。
Blue Horse,
Blue Horse,
What do you see?
I see a green frog looking at me.
青いウマさん、青いウマさん、何が見えるの? 私を見る緑色のカエルを見てるの。
Green Frog,
Green Frog,
What do you see?
I see a purple cat looking at me.
緑色のカエルさん、緑色のカエルさん、何が見えるの? 私を見る紫色のネコを見てるの。
Purple Cat,
Purple Cat,
What do you see?
I see a white dog looking at me.
紫色のネコさん、紫色のネコさん、何が見えるの? 私を見る白いイヌを見てるの。
White Dog,
White Dog,
What do you see?
I see a black sheep looking at me.
白いイヌさん、白いイヌさん、何が見えるの? 私を見る黒いヒツジを見てるの。
Black Sheep,
Black Sheep,
What do you see?
I see a goldfish looking at me.
黒いヒツジさん、黒いヒツジさん、何が見えるの? 私を見る金魚を見てるの。
Goldfish,
Goldfish,
What do you see?
I see a teacher looking at me.
金魚さん、金魚さん、何が見えるの? 私を見る先生を見てるの。
Teacher,
Teacher,
What do you see?
I see a children looking at me.
先生、先生、何が見えるの? 私を見る子供たちを見てるの。
Children,
Children,
What do you see?
子供たち、子供たち、何が見えるの?
We see a brown bear, a red bird, a yellow duck, a blue horse, a green frog, a purple cat, a white dog, a black sheep, a goldfish, and a teacher looking at us.
私たちを見る茶色いクマ、赤いトリ、黄色いアヒル、青いウマ、緑色のカエル、紫色のネコ、白いイヌ、黒いヒツジ、金魚、先生を見てるの。
That’s what we see.
これが私たちの見えるもの。
この英語絵本で学べる「英文法」
さて、ここからは、『Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?』を使って学べる文法・英単語をご紹介します。
これからお話するのは、あくまで保護者の方向けの説明です。(文法用語をたくさん使いますが、これをそのままお子さんに説明しないようご注意ください。)
- 知覚動詞see/lookのニュアンス
- see + 目的語 + 現在分詞(~ing)
- what do you~?の疑問文
- 形容詞の語順
(1)see・lookの違い
知覚動詞とは、「見える・聞こえる」のように五感で感知する動詞のことです。今回のsee・lookの他にも、hear/listen to/watch/notice/observeなどがあります。
see・lookともに、日本語では「見る」と訳されますが、そのニュアンスは異なります。
seeは「(自然と視界に入って)見る」の意。例えば、暗闇で何も見えないという場合、”I can’t see anything in the dark.”(暗くて何も見えません。)と表します。
対照的に、lookは「(視線を向けて)見る」の意です。例えば、学校の先生が生徒に “Look at the black board.”と言ったら、これは「黒板を見てください。(=視線を黒板に向けてください。)」という意味になります。lookを使って「~を見る」を表す場合、必ず前置詞atを伴い、”look at~”といいます。
(2)see+目的語+~ing
この絵本に繰り返しでてくる “I see ~ looking at me.”を使って学びます。
知覚動詞は、以下の3つの文型を取ることがあります。
(例)I saw her cross the street.〔私は彼が道路を横断するところを(最初から最後まで)見ていた。〕
・see+目的語+現在分詞形
(例)I saw her crossing the street.〔私は彼が道路を横断しているところを見た。〕
・see+目的語+過去分詞形
(例)I saw someone coming toward me in the dark.〔私は暗闇で誰かが自分の方に来るのを見た〕
今回使われている表現は、「see+目的語+現在分詞」の形です。「目的語が~しているところを見ている」という意味になります。
(3)What do you~?の疑問文
絵本で繰り返される “What do you see?(何を見てるの?)”を使って学習します。
“What do you~?”は、疑問詞whatを使った疑問文の「基本の”き”」です。”~”の部分に入る動詞を変えれば、いろいろな意味の英文を作ることができます。
What do you hear?
(何が聞こえますか?)
What do you mean?
(どういう意味ですか?)
(4)形容詞の語順
高校生になって、つまづくことが多いのが「形容詞の語順」です。形容詞は、以下のような「気まり」に従って並びます。
例えば、「日本の伝統文化」を訳す場合は “traditional Japanese culture”となります。日本語を直訳して “Japanese traditional culture”と訳すのは間違いです。
この形容詞の語順は、複雑で覚えにくいですよね。
実際のところ、形容詞が3つ以上並ぶことはほとんどありませんし、英語教師でない限りは、ここまで詳細に暗記する必要はありません。しかし、困ってしまうのは、「日本の伝統文化」のような分かりづらい表現が実際にでてくるということです。
ここでポイントとなるのは、「どれだけ形容詞が並ぶ表現に触れているか」ということ。
今回の絵本であれば、”a red bird”という「色彩→名詞」という語順を学ぶことができます。応用練習として、ここに「数量」「主観」「大小」などを加えていけば、形容詞の語順をしっかり身に付けることができるのです。
9歳~10歳頃の小学生は「単純思考」が優位ですので、このような順番はいとも簡単に覚えてしまいます…。うらやましい!
この絵本で学べる「英単語」
次は、この絵本から学べる英単語です。
小学校で学習(触れる)単語は600~700語ですが、この絵本だけでも、21語以上の語句を学習することができます。
動詞〔2語〕
see(~を(自然と)見る)
look at(~を(視線を向けて)見る)
色〔8語〕
brown(茶色の)/red(赤い)
yellow(黄色の)/blue(青い)
green(緑色の)/purple(紫色の)
white(白い)/black(黒い)
gold(金色の)※goldfishで一語
動物・魚・人の種類〔11語〕
bear(クマ)/bird(とり)
duck(あひる)/horse(馬)
frog(カエル)/cat(ネコ)
dog(イヌ)/sheep(ヒツジ)
goldfish(金魚)
teacher(先生)
children(子供たち)
英文法が身につく教え方
「教え方」と書きましたが、親がすることは「子供と一緒に英語を楽しむこと」です。親は「先生」ではなく、あくまでも子供の「サポーター」と考えます。
英語を教えるのではなく、「次は指で歌詞をなぞりながら歌ってみよう!」などと、子供の様子を見ながら声をかけてあげてください。
準備するもの
- 英語版絵本(youtube動画も可)
- 日本版の絵本(動画可)
- カード
絵本・音
一番よいのは、「日英対訳の絵本」と「うたの音」があることです。
日本語の対訳はなくても問題ありませんが、子供に「これ、どういう意味?」と聞かれた場合、英文を訳して教えるのは極力避けましょう。その代わりに、「絵をみてごらん。どんな絵かな」と、子供が絵から英文の内容を想像できるようにします。
ここで、親が英文の意味を訳してあげると、「英語の意味がわからなければ、親に和訳してもらう」ことが習慣づいてしまい、日本語で意味を理解できないと満足できなくなります。

そして、必ず準備して欲しいのが「うた」です。これは、youtubeなどの動画サイトを活用してもよいでしょう。もちろん、親が事前に練習しておくのもOKです。
カード
疑問文”Whad do you see?”と、知覚動詞を使った”I see a red bird looking at me.”を中心にカードを作ります。
この2文に加えて、登場する「色+動物名」のカードと、カンマ(コンマ)・ピリオド・クエスチョンマークも忘れずに作成しましょう。これらは日本語の句読点にあたり、「意味が区切れる印・文が終わる印」を覚えることは非常に大切です。
カードはお子さんと一緒に手作りするのがおススメです。英語を実際に書くことにより、「耳・目・手」を使って五感を刺激し、記憶に定着しやすくなります。

教え方の手順
- CDを聞く/動画を見る
- 歌って覚える
- 絵本/字幕の英字を指でなぞりながら歌う
- 何も見ないで “What do you see?~looking at me.までの【カード】を並べる
- 歌いながら「動物の名前」を入れ替える
①【イメージ理解】
まずは「音」をたっぷり聞かせましょう。動画を見せると、日本語対訳の絵本がなくても、話のイメージがつかみやすくなります。
②【音のインプット】
そして、楽しみながら歌います。子供の発音は正確でなくても構いませんが、聴かせるCD・動画などは癖のない発音のものを選びましょう。
③【音=文字の連結】
ここまでは、子供は音を真似しているだけで、音と文字は紐づいていません。動画の字幕や絵本の英文をなぞりながら歌い、音と文字の関係性を認識させます。
④【音=文字認識の確認】
次に、カードを並べます。答え合わせは、子供が動画や絵本を使って行いましょう。
⑤【応用】
色や動物の名前を変えていきます。他の動物や色を加えると、より効果的です。
☝小学生で覚えおきたい英単語
・gray(灰色の)
・pink(ピンク色の)
・rabbit(うさぎ)-white/brown
・cow(牛)-white/black
・wolf(おおかみ)-brown/black/gray
・kangaroo(カンガルー)-brown
・fox(きつね)-yellow
・giraffe(きりん)-yellow
・gorilla(ゴリラ)
・monkey(サル)
・deer(シカ)
・zebra(シマウマ)
・elephant(ゾウ)-gray
・tiger(トラ)-yellow
・mouse(ネズミ)-gray
・hamster(ハムスター)
・panda(パンダ)
・pig(ブタ)-pink
・snake(ヘビ)-yellow green
・lion(ライオン)
最後に・・・
これで、おしまいです!
ええ???
と思われた方もいるかもしれませんが、この方法で色んな絵本や歌に触れていくと、子供は言葉のルールを理解し応用できるようになっていきます。
大切なのは、
「子供の力を信じること」
「積み重ねること」
です。
今後、他の絵本や歌を使った方法、また、別の英文法学習法も掲載していきますので、楽しみにしていてくださいね。そして、少しでもご家庭での英語学習に役立てて頂ければ幸いです!